第54回特別展「自然史のイラストレーション ~描いて伝える・描いて楽しむ~」
大阪市立自然史博物館では、2024年6年2月23日(金・祝)から5月26日(日)まで、特別展「自然史のイラストレーション ~描いて伝える・描いて楽しむ~」を開催しています。
本展では、古い文献、論文や図鑑、普及のための資料など、様々な媒体に描かれたイラストレーションを通して、描かれたものの魅力と描いて伝えることの楽しさを紹介します。
ペリーの航海記に描かれた日本の生き物の図、化石で新種記載された松ぼっくりの原画、潮の満ち引きに関する絵本の原画、大阪市立自然史博物館友の会会員の詳細な観察スケッチなど、時代やジャンルも幅広いイラストレーションを展示し、誰もが写真を気軽に撮れる今の時代にこそ、絵や図の面白さを考えてみたいと思います。
東京大学総合研究博物館が所蔵する自然史に関する図の展示が決定しましたのでご紹介します。
また、講演会やワークショップなどの関連行事をご案内します。
【展示紹介】
東京大学総合研究博物館所蔵の自然史に関する図
牧野日本植物図鑑の分担作画もした山田壽雄氏の植物図、子ども向けの図鑑や教科書の生き物を描いた天木茂晴氏の挿絵、中島睦子氏のラン科植物図譜の原図をご紹介します。
【特別展関連行事】
自然史のイラストレーションをテーマとした関連行事を多数開催
セミナーや講師を招いた講演会、展示を担当した学芸員によるギャラリートーク、子ども向けのワークショップを開催します。
Ⅰ. 展示紹介
東京大学総合研究博物館が所蔵する自然史に関する図を展示します!
牧野日本植物図鑑の分担作画もした山田壽雄氏の植物図、子ども向けの図鑑や教科書の生き物をたくさん描いた天木茂晴氏の挿絵、中島睦子氏のラン科植物図譜の原図を展示します。
これらは本展の第二部「記載と図鑑」の中で紹介し、図鑑に掲載される図を描く過程や生き物の生き様を伝える図の魅力についてお伝えします。
【山田壽雄氏の植物図】
山田壽雄氏は、明治の終わりから昭和初期に活躍した植物画家で、牧野富太郎氏から指導を受けながら多くの図を描きました。
山田氏の植物図は『牧野日本植物図鑑』や『図説 普通植物検索表』など、牧野氏による著名な図鑑にも利用されています。
2017年に東京大学総合研究博物館のバックヤードで発見された山田壽雄氏の植物図は、牧野氏と同行して植物を入手したことや、牧野氏から植物をもらったことについてのメモが残っているものもあり、牧野氏との関係が伺える資料です。
山田壽雄の植物図(東京大学総合研究博物館所蔵、同館写真提供)
右:オモダカ(オモダカ科)
裏面には「牧の先生ト(府下大崎ニテ採集)とあり、牧野と一緒に採集したものから描いたようだ。
中央:シラン(ラン科)
一番下の花には「トル」という書き込みがあり、誰かの校閲を受けていたことがわかる。
右:シラヤマギク(キク科)
裏面には「牧野先生ト松戸ニテ」というメモと花の形態に関するメモがある。表面の欄外には2種類の頭花の図があり、形態を確認しながら描いていたようだ。
【天木茂晴氏の挿絵】
天木茂晴氏は、昭和の時代に活躍した画家です。
天木氏は、主に子供向けの図鑑や絵本、教科書、参考書などの理科教育に関わる書籍に、植物や鳥の挿絵をたくさん描きました。
日本画から博物画へ転向した天木氏は、理科教育の基本である観察を意識しながら、精緻な絵だけでなく、植物の成長や生き物の生き様がわかる絵を描きました。
一目で生き物の生活がわかる絵を展示して、伝える挿絵の魅力をご紹介します。
合わせて、天木氏の植物のスケッチも展示し、挿絵を描いた背景にも迫ります。
天木茂晴の挿絵:秋の草はら(上)と冬の草はら(下)(東京大学総合研究博物館所蔵、同館写真提供)
草はらに生きる植物について、同じ場所で季節を変えて、個々の植物を強調して描いている。
冬であってもロゼット葉でしっかりと生きている様子がわかりやすく描かれている。
天木茂晴の挿絵:早春の野辺の植物(東京大学総合研究博物館所蔵、同館写真提供)
ツクシ、タンポポ、フキ、セリなど早春の河辺の植物に加えて、コマツナ類やネコヤナギなども含めて春の様子がよくわかる絵。
丸の中に芽出しの様子も書き込まれており、植物の生き様がよくわかる。
天木茂晴の挿絵:水草(東京大学総合研究博物館所蔵、同館写真提供)
ため池の岸からの水深の変化に応じて生育する水草が変わっていく様子がきれいに描かれており、水草の生活が一目でよくわかる一枚。
天木茂晴の挿絵:植物の細密画(東京大学総合研究博物館所蔵、同館写真提供)
天木氏が残した植物の細密画は花の解剖図から根や地下茎などの地下部まで詳細に描かれており、天木氏の伝わる挿絵はこういった細部の観察が基礎になっているのだと思われる。
※天木茂晴の図は2枚に分けて撮影した画像を合成して広報用資料を作成。
【中島睦子氏のラン科植物図譜】
中島睦子氏はオランダで植物図の描き方を学び、特にラン科の植物図をたくさん描いています。
中島氏が著した『日本ラン科植物図譜』は、83属259種が収録され、日本のラン科植物の全体像がわかる図譜です。
ラン科植物を理解する上で重要な花の解剖図がものすごく充実しています。
中島氏のラン科植物図譜の原画と下書きを展示し、精緻な植物図が描かれる過程を紹介します。
中島睦子のシランの図譜(東京大学総合研究博物館所蔵、同館写真提供)
左:図鑑に掲載された図の原図
1枚の図に地下部を含めた全体、花、花の解剖図がレイアウトされており、シランの構造がよくわかる。
中央・右:花の解剖図の下書き
標本を確認しながら花の解剖図を描いていく。
展示では下書きと原図を並べて紹介することで精緻な図譜が描かれる過程も紹介する。
Ⅱ. 特別展関連行事
【講演会・自然史オープンセミナー】
自然史オープンセミナー(3月)「植物のイラストレーションを楽しむ」
「自然史のイラストレーション」展がはじまりました!展示を担当した2人の学芸員が植物の標本や図鑑に関係する図の魅力について紹介します。
日時:3月16日(土)午後1時~3時(開場12時30分)
講師:横川昌史学芸員(植物研究室)・長谷川匡弘学芸員(植物研究室)
場所:自然史博物館 講堂(YouTubeを使った同時配信も行います。)
定員:先着170名(講堂での聴講)
対象:講堂での聴講:どなたでも参加できます(小学生以下は保護者同伴)
ネット配信:インターネットに接続することができる方
参加費:無料(博物館での聴講の場合は博物館入館料が必要)
その他:6月30日(日)まで見逃し配信を行います。
同時配信を見られない方はご覧ください。
問合せ:植物研究室 横川
特別展普及講演会「自然史の描き手たち—明治期の画工について」
自然史の研究には図が欠かせませんが、明治期の大学や博物館では画工と呼ばれる図を描く専門家が活躍しました。
本講演では画工の研究をされている藏田愛子さんをお招きし、画工の足取りや描いた図についてお話いただき、自然史のイラストレーションについてより深く考えてみたいと思います。
日時: 4月28日(日)午後1時~2時30分(開場12時30分)
講師:藏田愛子(東京大学大学院人文社会系研究科・文化資源学研究専攻助教)
場所:自然史博物館 講堂(YouTubeを使った同時配信も行います。)
定員:先着170名(講堂での聴講)
対象:講堂での聴講:どなたでも参加できます(小学生以下は保護者同伴)
ネット配信:インターネットに接続することができる方
参加費:無料(博物館での聴講の場合は博物館入館料が必要)
その他:見逃し配信はありません。
問合せ:植物研究室 横川
自然史オープンセミナー(5月)「補い合う標本と図版」
実物資料を克明に描いた図版は時に標本よりも残りやすく、観察した事実を伝えてくれることがあります。
また、図版は生の時の色や微細な構造など、標本や文字による記録では残らない、しかし観察者が注目した特徴を記録するなど独自の価値を持ちます。
もちろん標本には図版では得られない情報もたくさんあります。
自然を記録する証拠として、標本と図版は互いに補い合いながらそれぞれに価値を持っていると考えます。
磯野資料や本郷図譜など、いくつかの事例をもとに紹介してみたいと思います。
日時:5月18日(土)午後1時~3時(開場12時30分)
講師:佐久間大輔学芸員(植物研究室)
場所:自然史博物館 講堂(YouTubeを使った同時配信も行います。)
定員:先着170名(講堂での聴講)
対象:講堂での聴講:どなたでも参加できます(小学生以下は保護者同伴)
ネット配信:インターネットに接続することができる方
参加費:無料(博物館での聴講の場合は博物館入館料が必要)
その他:6月30日(日)まで見逃し配信を行います。
同時配信を見られない方はご覧ください。
問合せ:植物研究室 佐久間
インターネット配信行事の視聴方法等について
【配信方法】
YouTubeを使った配信も予定しています。
インターネット環境に接続することができるパソコン、スマホなどがあれば、ソフトなどをダウンロードする必要はありません。
ネット接続できるパソコン・スマホは各自でご用意ください。
【接続方法】
YouTubeの「大阪市立自然史博物館」チャンネル(https://www.youtube.com/c/大阪市立自然史博物館/)にアクセスして表題の番組をクリックしてください。
開始時間になれば始まります。
番組を見つけられない場合はYouTubeの検索ボックスに表題名を入れて検索してください。
【ギャラリートーク】
展示作成に関わった学芸員が、担当したコーナーを詳しく解説します。
2月24日(土)動物担当の学芸員/3月2日(土)植物担当の学芸員/3月9日(土)植物・菌類担当の学芸員/3月16日(土)植物担当の学芸員/3月23日(土)植物担当の学芸員/3月30日(土)昆虫担当の学芸員/4月6日(土)動物担当の学芸員/4月13日(土)動物担当の学芸員/4月20日(土)植物化石担当の学芸員/4月27日(土)植物担当の学芸員/5月4日(土)植物担当の学芸員/5月11日(土)植物・菌類担当の学芸員/5月18日(土)植物・菌類担当の学芸員/5月25日(土)植物担当の学芸員
日時:会期中の毎週土曜日の午前10時~(1回約15分+質疑応答)
場所:特別展会場内
参加費:無料(特別展観覧料が必要)
申込:不要
【子どもワークショップ】
特別展で、一番やさしい子ども向け行事。ハカセやスタッフと一緒に、展示を楽しもう。
「ちょうせん!自然史イラスト」
自然や生きものの絵が、ずらーりならんでいるよ。しょくぶつ、さかな、むし、きのこ…。
こまかい線でかかれた絵、きれいな色のたのしい絵。いろいろな絵があるよ、じっくり見てごらん。
絵のいいところってなんだろう?写真とはちがうの?
特別展「自然史のイラストレーション」のてんじを見ながら、きみも「自然史イラスト」をかいてみよう。
日時:2月24日(土)・25日(日)、3月9日(土)・10日(日)
午前11時~12時/午後1時30分~3時(1回約30分)
場所:特別展会場内
対象:どなたでも(小学生未満は保護者の同伴が必要)
参加費:無料(特別展観覧料が必要)
受付:時間内いつでも
開催概要
1.名称 特別展「自然史のイラストレーション ~描いて伝える・描いて楽しむ~」
2.主催 大阪市立自然史博物館
3.会期 令和6年2月23日(金・祝)~5月26日(日)
4.開館時間 2月23日~29日 9:30~16:30(入館は16:00まで)
3月1日~5月26日 9:30~17:00(入館は16:30まで)
5.休館日 月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
6. 会場 大阪市立自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
TEL:06-6697-6221 FAX:06-6697-6225
地下鉄Osaka Metro御堂筋線「長居」駅下車3号出口・東へ約800m、JR阪和線「長居」駅下車東出口・東へ約1㎞
7.観覧料 大人500円、高校生・大学生 300円、期間内特別展フリーパス 大人1000円、高校生・大学生 600円
※本館(常設展)とのセット券は、大人700円、高校生・大学生 400円。
※中学生以下、障がい者手帳など持参者(介護者1名を含む)、大阪市内
在住の65歳以上の方は無料(要証明)。30人以上の団体割引あり。
※本館(常設展)、長居植物園への入場は別途料金が必要です(セット券を除く)。
8.後援 大阪府教育委員会、大阪市教育委員会