今回ご紹介するベーカリーは、北巽にある「ぱん食店こさり」。
安心と安全、そして極上のおいしさのために、とことん素材にこだわってパンを作るお店です。
おすすめのパンやおいしさの秘密について、代表今井さんにお聞きしてきました^^
使う素材は体によくておいしいものを
大阪メトロ「北巽駅」を下車。
勝山通り沿いを3分ほど歩くと、天然酵母と素材にこだわったパンで人気のベーカリー「ぱん食店こさり」があります。
(パンの端をカプッとひと口食べたマークが目印です。)
お店の中に入って目を引くのが、壁面に大きく描かれたチョークアート。
雨を受ける小麦、草を食む牛、燦燦と光を放つ太陽など、パンが作られるまでの過程をひとつの絵にしています。
その壁面に沿って据え付けられたパン棚には、種類豊富なパンがズラリ。
購入したパンは、オーガニックコーヒーや100%果汁ジュースなどと一緒に、併設されたカフェで食べることができます◎
りんごジャムパン 140円(税込)
見た目がキュートな「りんごジャムパン」。
白肌にほんのり焼き色が付いていて、和菓子の「桃山」のような上品さがあります。
国産小麦と天然酵母で作る生地はしっとりしていて優しい味わい。
自家製りんごジャムはコンポートに近い食感があって、嚙みしめると果肉の甘みがジューシーに広がります。
代表今井さん:「このパンに使っているりんごジャムの他、カレーパンやあんパン、クリームパンの具材も全て手作りです」
ミルキーフランス 120円(税込)
練乳と四葉バターで作るミルククリームをサンドした「ミルキーフランス」。
パンの色が白く、クリームとほぼ同色!
なたね油を使った生地だそうで、その特徴なのか、表面にツルっとした独特の光沢があります。
少し前まで、体に害を及ぼすエルシン酸が含まれるため食用に向かないとされていたなたね油ですが、現在は品質改良により、体に良いとされる脂肪酸をバランスよく含む理想的な油となっているそう。
着色料・酸化防止剤も不使用です◎
チョココルネ 150円(税込)
日本で生まれた菓子パン“コルネ”。
語源は楽器のコルネット(トランペットのような管楽器)なんだそう。
クルクル巻きの生地をほどきながら食べるのが楽しい♫
中には自家製チョコクリームがたっぷり。
香り、甘み、苦み、口当たり、のど越し、すべてがとても上品。
素材をとことん吟味して、よいものだけを使って丁寧に作ると、自ずとこういう味わいになるんだろうなぁ。
余韻にふわっとラム酒が香って、見た目よりも大人っぽい味♪
韓国風ピザ 130円(税込)
黒ごまを練り込んだ国産小麦の生地の上に、コチュジャンベースのソースを塗り、韓国のりとチーズをトッピングして仕上げた「韓国風ピザ」。
今井さん:「生野区近辺には在日韓国人の方が多くおられるんです」
そんな土地柄に合わせて作ったパンなんですね。
今井さん:「“こさり”という店名も、じつは “わらび”という意味の韓国語なんですよ」
「こさり」。
多年性のわらびにあやかって、地域にしっかりと根差したお店になるよう、そう名付けたのだそう。
食パン 280円(税込)
シンプルな味わいに仕上げた食パン。袋の外から触ってみても、柔らかな質感が伝わってきます。目も整っていてきれい。
今井さん:「レーズン食パンもあるのですが、今日は人気で売れてしまいました^^」
くるみ食パン 360円(税込)
食パン生地に、香ばしいクルミを混ぜ込んで仕上げた「くるみ食パン」。
その他、ごま食パンや金曜日限定のチョコ食パンなど、食パン系のラインナップがかなり充実しています。
カヌレ 180円(税込)
蜜蝋でカリッと甘く仕上げた表皮に、モチッと濃厚なカスタード味の生地を包んだカヌレ。
ワインに添える一品としてもぴったり。
シフォンケーキ 220円(税込)
冷蔵ケースに並べられているフワッフワのシフォンケーキ。
お店のカフェスペースで、オーガニックコーヒーと一緒にどうぞ♪
クッキー各種 270円
左はチーズクッキー270円(税込)。
右はアーモンドココアクッキー270円(税込)。
ちょっとしたプレゼントにも喜ばれそうです♫
「こさり」が始まったきっかけ
「ぱん食店こさり」を開業するきっかけは、代表今井さんが、身寄りのない重度重複障がいを持つ15歳の青年に出会った1986年に遡ります。
福祉制度が今ほど整っていなかった当時、青年は地域の人たちが用意した仮の住まいに身を寄せ、地域の人たちの無償の手助けによって生活していました。
そんな彼の周りには、介護にあたる近隣の人だけでなく、身体・知的・精神に障がいのある人や、在日韓国・朝鮮の人など、さまざまな背景を持った人たちが自然と集まり、温かい心の交流が生まれていたそうです。
今井さん:「みんな分け隔てなく接して、時には一緒にお酒を酌み交わしながらいろいろなことを話しました。そうした話し合いの中で、青年が安心して暮らし続けることができる家を用意してはどうかという案が出たんです。彼の生活を守るためにも、仮住まいではなくちゃんとした家があるほうがよいと僕も思いました。話が具体的になるにつれ、介護の人が行き来するだけの家になっては寂しいので、人でにぎわう作業所を一緒にした場所にしようという案も挙がりました。その作業所というのが、今の『パン食店こさり』につながっていったんです」
今井さんはその案を実現するため、不動産屋を回り物件を探し、地域の人からカンパを集めるなどして精力的に動きました。
そして1988年に一軒家を購入。
2階を青年の住居にし、1階を障がいのある人の働ける作業所「ぱん食店こさり」としてオープンさせたのです。
今井さん:「彼がいなかったら『こさり』はなかったんです。だから、今も彼が『こさり』の社長です」
これからの「こさり」
今井さん:「当時(1990年前後)の障がい者施設というと、内職などの内向きでどちらかというと暗い印象の仕事が多かったんです。そうではなくて、もっと社会に開けた仕事をしないとだめだと思って、パンの販売を選びました。パンであれば、“売る”・“買う”という行為が発生するので、当然地域の人と関わることになりますよね。どんどん外に出て、障がいがあっても働けるんだっていうところを見てもらえるようにしたいんです。みんなの話を聞くと、障がい年金だけではなかなか自立した生活を送れないし、やっぱり自分で働いてお給料を稼いで生きていきたいと言います。そんな彼らの希望を一緒に叶えていきたいという想いで、今『こさり』を運営しています。僕やなんかは、彼らと関わることでいろんなことを教えてもらってきました。素材の品質へのこだわりも、森永ヒ素ミルク混入事件で脳性麻痺になった創業メンバーがいたことなんかが大きく影響していて、彼から教えられることも本当に大きいです。そんな背景もあって、安全で安心な食べ物を提供することというのが、創業当初から『こさり』のパン作りのモットーになっているんです。これからも、地域のさまざまな人たちと交流しながら、地域のホットスポットであり、働き方も含めてオンリーワンベーカリーを目指していきたいと思います。」
現在、障がいを持った6人を含み全12人の従業員の方が、“障がい者と対等に共に働く”という理念のもと「ぱん食店こさり」で働いています。
ひとりひとりの特長や個性に応じて、作業内容やサポート体制を柔軟に変えて仕事に打ち込める環境を作っているそう。
人にやさしい素材と想いをたっぷり詰め込んで、「こさり」のパンは今日もおいしく焼き上げられています♪